カンヌ4冠!映画史を塗り替える偉業達成!『ドライブ・マイ・カー』濱口監督「流れが淀まないよう一気に書いた」 脚本執筆の秘話語る

(C) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会 (C) Kazuko WAKAYAMA
7月19日(月)

主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した濱口竜介監督最新作『ドライブ・マイ・カー』。現地時間7/6(火)~17(土)開催の第74回カンヌ国際映画祭の授賞式が7/17(土)19:30(日本時間:7/18(日)2:30)に行われ、見事、『ドライブ・マイ・カー』が日本映画として初となる脚本賞に輝きました!また、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も受賞。カンヌの歴史を塗り替える偉業を達成した。

濱口監督作品としては、商業デビュー作『寝ても覚めても』が2018年に同映画祭コンペティション部門に出品されており、今回、2作品連続・3年ぶりの出品にして見事、脚本賞受賞の快挙を果たした。さらにこれまで濱口監督は、第71回ベルリン国際映画祭で短編集『偶然と想像』が審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞。第77回ヴェネチア国際映画祭では共同脚本を務めた『スパイの妻<劇場版>』が銀獅子賞(監督賞)を受賞するなど三大映画祭を席巻し、気鋭監督として世界的に注目を集めていた。


今回受賞した脚本賞は、コンペティション部門に出品された全24作のうち最も優れた脚本に贈られる賞で、日本人・日本映画での受賞はカンヌ国際映画祭史上初!濱口竜介監督と、共同脚本の大江崇允さん二人へ贈られた。また、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞と、脚本賞の受賞はカンヌ史上初!映画祭の歴史を塗り替える偉業を成し遂げた。

授賞式を終え、受賞者による記者会見(フランス現地時間7/17(土)22:00頃(日本時間7/18(日)AM5:00頃)に濱口竜介監督が登壇。日本映画初となる脚本賞受賞、その快挙を成し遂げた脚本執筆の裏側について語った。
*賞は、共同脚本を務める濱口竜介監督と大江崇允、二人に贈られた。

<濱口竜介監督 記者会見内容>

―—決して複雑な脚本ではありませんが、登場人物が作用しあっていて複雑な人間関係を描いた演劇のようでもあります。どのようにして流れを作ったのでしょうか?

濱口: 重要なのは原作の物語だと思います。村上春樹さんが書かれた「ドライブ・マイ・カー」という物語の登場人物の魅力を決して損なわないようにと考えていました。家福とみさき、この二人がすごく抑制された人間性で、自分のことをあまり喋るわけじゃないんだけれども、それぞれ腹のなかに渦巻いている感情というものはあって。それがあるきっかけて出てきてしまう。内にある物が溢れ出してくるという流れを一つの軸として考えていました。

実際”流れ”というものはものすごく意識して書いていたと思います。滞ることがあってしまったら、この長い物語というのは、観客にとってとても負担になってしまう。淀むことなく進んでいくように、ということは考えていました。

それが一体どうすれば出来るかと思ったとき、実際に流れるように書こうと意識していたと思います。
とにかく、何度も何度も村上春樹さんの原作を読み、そして原作以外の要素としても、「ドライブ・マイ・カー」が入っている短編小説集「女のいない男たち」の要素をピックアップしていくために読みました。そして原作の中にあった「ワーニャ伯父さん」を何度も何度も読みました。それを繰り替えして自分に要素がインプットされたら、それを一気に流し込むように書くってことをやっていました。どこかで止まってしまったらちょっと戻って、流れが淀まないような形で一気に書くということを何度か繰り返した結果だと思います。

―—とても素晴らしい映画でした。シーンが進むごとに風景や音の表現が変わっていくのも興味深かったのですが、それは登場人物の心情の変化を表すためでしょうか?

濱口:登場人物を変えるためにと言うよりは、登場人物が変わっていくと登場人物の関係性なり感情が変わっていく。すると自然に音が変わっていくってことがあると思います。単純に出てくる感情によって声が違うってことがあるし、関係性によって言葉の出て来方が違うんですよね。

ある時はバーっと流れるように溢れてくる、それは中盤以降、家福とみさきの関係性で起こることですけれど、一方で、それだけある種の言葉が溢れた後っていうのは、二人はまた沈黙をする関係に戻っていく。でもそれは最初の頃の沈黙とは意味が違う沈黙と思っています。二人の間の親密さみたいなものを観客が確信して味わったあとのものなので、この沈黙の中に観客はもっと今までよりも分厚い何かを受け取っているんじゃないか、という風に思っています。沈黙の感じ方みたないもの、環境音の聞き取り方みたいなものが、登場人物の変化を通じて観客の耳も変わってくることがあるんじゃないかと思っています。

8月20日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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作品紹介

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