あまりの哀しみと不穏さに、立ち直る術がない…『クリーン、シェーブン』観る者に地獄の疲労感を与える、ノイズまみれ予告編到着。

(C) 1993 DSM Ⅲ Films, Inc. (C) 2006 Lodge Kerrigan. All Rights Reserved.
7月30日(金)

幻覚幻聴に悩まされながらも娘を探し続ける、統合失調症の男の姿を徹底的に抑制されたトーンで映し出した、哀しく陰鬱なサスペンス映画『クリーン、シェーブン』より予告編が到着した。

本作は、ロッジ・ケリガン監督が93年に発表した初の長編作で、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)、『デッドマン』(95)、『コーヒー&シガレッツ』(03)など、ジム・ジャームッシュ作品の常連スタッフであるジェイ・ラビノウィッツが編集を務めている。第20回テルライド映画祭でワールドプレミアの後、第11回サンダンス映画祭や第47回カンヌ国際映画祭の他、ニューヨーク近代美術館でも上映され、そのノイズにまみれた唯一無二の映像表現を、スティーヴン・ソダーバーグ、ダーレン・アロノフスキー、ジョン・ウォーターズといった錚々たる監督たちが、“忘れがたき表現性”と絶賛した。


日本では、96年の公開以降、作品全体が放つ疲労感を覚える空気、悲惨さと哀愁が話題となり、未だに語り継がれるも近年では観ることの出来ない幻の作品となっており、昨年頃から一部で再公開を希望する声も多数あげられていた注目作だ。

解禁した予告編は、観る者が平静でいられなくなるようなノイズが全編を覆っており、冒頭から不快度MAX。自分の頭に受信機、指には送信機が埋め込まれていると信じている主人公ピーターの混乱と不安を疑似体験するような作りとなっている。震えながらタバコを吸う姿、指先を見つめるショット、ただトマトを切っただけでも、観ているこちらの心がざわめいていく。しかし、そこに出るのは“娘に会う。望みはそれだけだった。”の文字。その後に映る、少女の遺体は何を意味するのか。「こんな夏はもうこりごり 普通じゃないわ」という、ある意味では同時代的とも取れる印象的なセリフの断片を呟く女性の口元。予告の終盤、繰り返される“聞こえるか。”という言葉と共に入るフラッシュカットが不穏さを加速させる予告となっている。果たして、彼の運命と心はどこへ向かうのか。この日本制作の予告編はロッジ・ケリガン監督自ら確認、監督によるフレーム単位の繊細かつ神経質な修正を経て完成したものだ。

『クリーン、シェーブン』予告編

世の中は静かであっても、常に頭の中のノイズに悩まされる男。ただ娘に会いたいだけなのに、周りは彼の行動を理解できない。狂っているのはこの男なのか。それともこの世の中なのか。主人公の行動は、ときに目を覆いたくなるほど、観る者に計り知れない痛みや切なさ、やりきれなさを与え、一生脳裏にこびりつき、忘れられない衝撃を与える。


8月27日(金)よりシネマート新宿ほか拷問ロードショー

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