『北風アウトサイダー』90秒版予告編&監督・主演の在日コリアン3世の崔哲浩 公式インタビューが到着!

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1月17日(月)

大阪・生野にある在日朝鮮人の町。ここに暮らす兄妹の絆を描く実話『北風アウトサイダー』より、90秒版予告編と監督・脚本・主演の崔哲浩のオフィシャルインタビューが到着した。

「朝鮮人も日本人もみんな人間だから、仲良くできる時代が必ず来る」というオモニ(母)の言葉を胸に、4人兄妹が、オモニ食堂で一緒に働く仲間や、日本のヤクザの組に入った旧友らと協力し、店の借金返済や一方的な価値観を押し付ける在日朝鮮統一連合会などの難題に挑む群像劇。


2007年に映画監督の入江悠と共に劇団いろは野良犬弾を設立した、俳優であり劇団主催者でもある崔哲浩が自ら監督、脚本、主演を務め、その意思を汲んだスター級の演劇人が勢ぞろいした本作。崔の実話を元に、人種的偏見に遭いながら、貧しくとも、笑いと励ましを忘れない家族が力をあわせ、次々と襲いかかる人生の避けがたい不条理と戦う人情劇が完成した。

『北風アウトサイダー』予告編

Q. 自叙伝的映画とのことですが、崔さんが演じた長男・ヨンギは、崔さんとどのような関係ですか?
今回僕が脚本も書いたんですけれど、ヨンギは自分自身です。兄弟3人出てくるんですが、最も自分の実話・想いに近い役です。今回兄弟男3人、妹が1人の4兄妹の話なのですが、僕の幼少期からの体験を兄弟3人に散りばめました。キャスティングしていく中で、僕がヨンギを演じるのがバランスがいいのではないかと思いました。

Q.本作のテーマをお教えください。
テーマは、「人間とは」、「愛とは」、遺伝子だったり、昭和平成令和と時代が流れている「時代の継承」、親から子、孫、そして思想の意味もある「血脈」です。この4つを主軸にして脚本を書き、撮影をしました。


Q. 本作の何パーセントが事実で、何パーセントがフィクションなんですか?
90%位が本当です。10%がフィクションだったり、エンタメにするためにバランスを取った形です。オモニ食堂というのはないんですが、(自分自身が経験したとは限らず、)隣も、隣の隣も在日コリアンだったので、親族、家族のように育った在日コリアンの身近な体験を全部取り入れました。

Q.ヨンギ役を演じるにあたって、大切にしたことは何ですか?
心の病を持っているという役なんですが、オモニもなんです。その血を引いているということで精神が不安定な役を演じようと思って、精神病棟に取材に行って、目の合わせ方や、健常者だったらこう捉えるけれど、心の病気がある方は違う風に捉えてしまうこともある。また、家に戻った映画の後半は、健康を取り戻し、元気になっていく過程を意識しました。

Q. 崔さんのお母さんもノイローゼ気味あったんですよね?
がっつりですね。実体験です。

Q. ヨンギの「ひょっとしたら、壁作ってるのは、俺ら在日朝鮮人の方ちゃうかな」というセリフがありますが、普段から考えていることなのですか?
実際思っていることです。僕は日本と在日コリアン、両方の友達がいるので、在日コリアン側が心を開いた方がいいんじゃないかと思うこともあります。


Q. チョロに「おかえり」と言われて泣き崩れるシーンなど、カメラマンさんに自分をアップにしてと言えばしてもらえるのに、あえて目立たないようにしているように思ったのですが、意図はありますか?
僕が20数年前に『ホタル』(2001)という映画で高倉健さんと共演した時に、健さんはカメラの前では一切泣かなかったんですよ。撮影が終わってスタッフがバラシ出したら、おもむろに歩き出し、40分位泣いていらっしゃったんです。僕の中では、「女優はカメラの前で泣いていいけれど、俳優はカメラの前で泣いたらあかん」という健さんや(菅原)文太さんの理念が10代の頃からあるんです。

Q. オモニの「朝鮮人も日本人もみんな人間だから、仲良くできる時代が必ず来る」という言葉は、実際昔から言われてきたのでしょうか?
うちのオカンから聞きたかったんですけど、うちのオカンは言っていなかったです。ただ、そういうことを言う在日の方々もたくさんいらっしゃいました。

Q.「あんたら在日が在日じゃなかったら、もっと仲良くできるのに。」、「私はあんたがどこの人やろうと仲良くできるで」、「これ以上あなたたちを変な目でみたくないんですよ」というやりとりも切実でしたが、実際にそのようなことを言われたことがあるのでしょうか?
もちろん30年前は実際にありました。小学校、中学校までは。幼稚園、小学校の頃はモロいじめられていました。


Q.次男・チョロの妻・朱美が不妊症で、娘のナミと血が繋がっていないことで、色々なドラマが生まれますが、養子という話は、フィクションですか?
お隣さんの本当の話なんです。兄弟に子供を1人あげて、その養子には二十歳くらいになるまで言っていなくて。でも中学くらいから「何か変だな」ってわかっていたみたいです。

Q. 「朝鮮大学は学費が高く、日本で認可されてていないから日本社会で生きて行くには不利」という問題が描かれていますが、在日朝鮮人の皆さんが直面する問題なのでしょうか?
朝鮮大学は卒業後、朝鮮銀行で働くだとか、在日の朝鮮新聞で働くだとかすごく狭い世界で生きて行く人が多いと感じます。もちろん朝鮮大学を出てから一般企業に入る人もいますが、家を借りるにしても、国籍が朝鮮・韓国だったら、借りられないというのも現実的にあります。

Q. 本当に、朝鮮大学に行くかいかないか問題で、喫茶店の他のテーブルの人も会話を聞いていた、というようなことはあるんですか?
これは全部本当の話です。僕が実際に経験した話です。組織の名前は変えていますが。僕が(朝鮮学校から)日本学校に転校する時に、東京から幹部が(転校しないようにと)説得に来ました。


Q. ヨンギと、暴走族の日韓連合が島田組に吸収され、ヤクザになった清田との二人のシーンは、少ないながら、厚い友情を感じました。清田のモデルの方はいらっしゃるのでしょうか?
います。日韓連合も、僕らの時代に本当にあって、在日コリアンも日本人も仲良くツルんで仲良くヤンチャをしていた半グレの集団です。

Q. 本作の見どころはどこだと思いますか?
作る前から意識したのですが、1回目観るより2回目、2回目観るより3回目の方が面白い映画だと思います。本当は1回だけ観てわかりやすい映画の方がいいのかもしれないですけれど、何年後に観ても愛される映画を作りたいというのがあったので、意図的に人間関係を複雑に描いています。群像劇でわかりづらい部分もあるかもしれないですが、2回、3回と観て頂けたら、もっと好きになってもらえると感じています。自画自賛になりますが、骨太な映画になっているので、ぜひ劇場で観て頂きたいです。

2月11日(金・祝)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

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作品紹介

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