『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』ティファニー・バルトーク監督オフィシャルインタビューが到着!

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10月1日(土)

安室奈美恵の極細眉の生みの親で、キム・カーダシアンのコントゥアリングを開発した天才メイクアップ・アーティストの人生に迫るドキュメンタリー『メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー』の劇場公開を前に、自身もプロのメイクアップ・アーティストとしても活躍してきたティファニー・バルトーク監督のオフィシャルインタビューが到着した。

1990年代、細眉、リップライナーが流行、そして光と影を駆使して立体感を出す「コントゥアリング」が爆発的に広まった。その革新的なモードメイクによって世界を席巻したのは、21才の若さでレブロンのULTIMAのクリエイティブ・ディレクターとして起用され、資生堂ブランドINOUIの全盛期のクリエイターだったことでも知られる天才メイクアップ・アーティスト――ケヴィン・オークイン。しかし、頂点を極めた彼は、頭痛と共に精神的苦痛に長年悩まされ、鎮痛剤の中毒で2002年に40歳の若さで突然の死を遂げる。


本作では、時代を作ってきたケヴィンが、飾りすぎることを認めない風潮だった時代につけまつげを使ったり、極細眉を流行らせたり、全世界で2000万枚を売り上げたジャネット・ジャクソンのアルバム「Janet.」のジャケットの撮影をした際の裏話を紹介するほか、ケヴィンが多様性を意識し、"典型的な若い美人"とは違ったライザ・ミネリのメイクや、ブルック・シールズらに男装させる性差をも超えるメイクで、美の固定観念に挑戦していた姿も紹介。

Q:メイクアップアーティストの中でもなぜケヴィンについてドキュメンタリーを作ることにしたんですか?
ケヴィンはずっと私の最大のインスピレーションでした。私たちがメイクを始めたころは、今の子供たちのようにYouTubeなどのチュートリアルへのアクセスが全くありませんでした。メイクの本はほんの数冊だけで、ケヴィンの本の知名度が一番高かったので、その本を読んで育ち、それを通して彼にメイクのすごさを教えてもらいました。確か2012年だったと思いますが、ケヴィンの存在を知っている人が少ないことに気がつきました。「そんなことはあってはいけない!ケヴィンについての映画を撮らなければ!次の世代への橋になるものを作らなければ!」と決心しました。

Q:ケヴィンの本質が当時あまり知られていなかったと読んだんですが、リサーチをしている間に、何か驚いたことはありましたか?
たくさんありました。でも、一番驚いたのはケヴィンがいつも「もっと」欲しがっていたことです。私は彼がなにもかも手にいれて毎日ハッピーだったろうと思っていたんですけど、ケヴィンも「もっと」という気持ちがあったことにとても驚きました。とても共感できましたね。ケヴィンのこともっと知りたいと思いました。どうして満足できなかったのかを。

Q:ケヴィンがメイクを進化させたのが映画で描かれていますが、ケヴィンの一番の遺産は何だと思いますか?
ケヴィンの一番の遺産は「どんな顔も美しい」と教えてくれたことですね。誰にでも美しい特徴があり、質があり、それに丁寧にスポットライトをあてることによって、他者からどう見えるのかを変えることができますが、なおかつ自分でいられる。他人になる必要がなく、自分でいながら美しくあることができます。自分なりの自分で美しくいられる。ケヴィンはそう信じていました。


Q:ケヴィンは、極細眉やつけまつ毛以外、何を広めましたか?
ケヴィンはコントゥアリングを発明しました。まあ、正確にいうとコントゥアリングを発明したのはウェイ・バンディなんですけど、ケヴィンが人々に手本を見せたことによってそれが広まりました。その後、マリオ・Dがさらに開発して、現在、キム・カーダシアンのルックスとして知られています。ルネッサンスみたいに再び人気になりました。

Q:劇中で、ケヴィンが時間をかけてモデル達につけまつげをつけていたせいで、コレクションの開始時間を大幅にオーバーしたけれど、VOGUEの編集長だったミラベラがつけまつ毛を大絶賛したという事件が紹介されていましたけれども、他にそのような伝説はありましたか?
映画には出てこないことなんですけど、フォトグラファーのマイケル・トムプソンが教えてくれたフランスでの話があります。フランスにはエアコンがあまりないらしくて、ケヴィンは写真撮影の現場にエアコンを持ってこさせていたそうなんです。でもそれで現場はとても遅れたそうです。今では絶対にできないことですね。

Q:映画ではケヴィンの実績以外に、ファッションの歴史が紹介されています。例えば、以前はモデルが自分でメイクしていたのに、80年代についにメイクのプロたちを採用したとか、90年代には雑誌の表紙はスーパーモデルだったけれども、現在はセレブだとか。ケヴィンがニューヨークに出たのは、スーパーモデルの全盛期で、タイミングがよかったような気がします。1993年以降ファッション業界が、新たなメイクアップアーティストをもてはやし出しても、ケヴィンは成功を収めましたね?ケヴィンのキャリアについてどう思いますか?
ミュージックビデオに移行したのは大きな変化だったでしょう。他の人も同意見かはわかりませんが、個人的にはケヴィンがそれでとても疲弊したのではないかと思います。ケヴィンは1000%力を尽くす人で、手を抜けないんです。でも、ミュージックビデオの現場は撮影時間がとても長いんです、時には20時間撮影する時もあります。そのころから、痛みを感じ始めたらしいので、ロサンゼルスとニューヨークの移動の繰り返しにも耐えられなかったと思います。今では、ルックスを決めたら、アシスタントにやってもらうんですけど、ケヴィンはそういう人ではなかったですね。凄腕のアシスタントがいたんですけど、ケヴィンはアーティストのそばを離れませんでした。アーティストに100%尽くしたんです。そういうライフスタイルで体力を維持することは難しかったでしょう。

Q:ジャネット・ジャクソンの有名なアルバム『janet.』のジャケットのメイクや、シェールの”Believe”( https://youtu.be/nZXRV4MezEw)とホイットニー・ヒューストンの”Where Do Broken Hearts Go”のミュージックビデオのメイクなどをしたとことが紹介されていますけれども、他には何がありましたか?
私が好きなのは(マイケル・ジャクソンとジャネット・ジャクソンの)”Scream”( https://youtu.be/0P4A1K4lXDo)です。彼はジャネットのメイクをしました。あのメイクが私は一番大好きです。でも一番広く支持されているのはジェニファー・ロペスの”Waiting For Tonight”( https://youtu.be/_66jPJVS4JE)のMVのメイクですね。スワロフスキーのクリスタルが多く使われています。この二つが一番記憶にのこる彼の仕事だと思いますが、彼は他にもたくさんやりました。例えば、テイラー・デイン、ダイド、ジュエルなど面白い人がたくさんいますよ、想像もつかないような。


janet./ジャネット・ジャクソン
ユニバーサル ミュージック

Q:ケヴィンは21歳の若さでレブロンのULTIMAのクリエイティブディレクターとして採用されましたね?
彼は周りに影響を与える性格だったんです。「この世界を変える!」と周りに信じさせ、実際に変える力を持っていました。シーンに登場した最初からそうでした。ケヴィンは「自分がこれをやるからには、そしてここにいるからには年齢なんて関係ない」と考えていました。また、ケヴィンは、どんなアイデアでも相手を説得することができたんです。ULTIMA IIにニュートラルパレットを作るというアイデアも、斬新な発想だったでしょう。当時の状況を覚えていますか。全てが派手で…派手なピンク、派手な紫、派手なブルーなどは、ナチュラルに美しく使うのが難しいので、一般の女性は、この手の色合いは手を出しにくかったんですよね。でも、ついに、みんなが使える口紅が登場し、一般の女性を視野に入れた製品がでてきて女性たちが参加できるようになった。シンプルに美しい口紅をつけることでね。それ以前は、一般の女性たちは蚊帳の外に置かれていたんです。メイクには威圧感があったんです。ケヴィンが登場したタイミングもちょうどよかったと思いますし、ある意味でラッキーでもあったかもしれませんが、ケヴィンが仕掛け人でした。「ケヴィンがラッキーだっただけ」と言う人もいるんですけど、私はそういう考え方が好きではありません。彼が全ての仕掛け人で、発起人でしたから。

Q:彼は美の概念を壊そうとしました。例えば、ライザ・ミネリとか。他に例を挙げられますか?
もちろんです。バーブラ・ストライサンド。バーブラ・ストライサンドは鼻が個性的なルックスです。ケヴィンのように、バーブラを輝かせた人は誰もいません。美しい女性として引き立てた人はね。その時までは、ずっと割とエスニックなルックスだったけれど、ケヴィンは、どう引き立てたら良いか分かっていました。ホイットニー・ヒューストンも同じような感じでしたね。ナオミ・キャンベルはケヴィンだけを指名していました。ケヴィンは彼女たちを、今まで誰も見たことがない目で見ることができ、彼女たちが自分が美しいと感じられるようにしました。それこそがケヴィンの本当の才能だったと思います。


Q:ハワイでのホームビデオで、ケヴィンとジェレミーが愛の誓いを交わしていましたが、正式な結婚式はありましたか?
残念ながら、同性婚は当時は禁じられていましたが、ジェレミーに二人が誓いを交わす動画を共有してもらいました。とても愛し合う関係でした。


Q:本作は2017年に完成したそうですが、2022年に日本で公開されるので、ケヴィンが亡くなってから20周年になります。そして生まれてから60周年です。それについてどう思いますか?
すごいことです。映画を作っている時は、15周年までに完成させないと!と思っていたことを覚えています。今でも興味を持たれる人物だということを誇らしく思います。ケヴィンも喜ぶでしょう。亡くなってから20年後も彼について話す人がいるなんて、彼が望んでいた通りだと思います。ケヴィンは自分の名前がみんなの口にのぼることをとても喜ぶでしょうから、とても嬉しく思います。

Q:最後に読者に一言お願いします。
ケヴィンという人物について映画を通して初めて知る方がいるのはとても嬉しいです。それに、既に知っていた人の中にも、「彼について全部知っていると思ってたけど、映画で新しいことを知った」と言ってくれる人が多くて、とてもありがたくてうれしく思います。映画を撮影している間、ケヴィンの存在を感じていました。映画をご覧になる皆さんが、楽観的でポジティブな気持ちで映画館を出てくださると嬉しいです。何でも可能だ、という気持ちになってもらえたら。ケヴィンはそんなふうに考えていましたし、彼の人生を映画館でご覧になった方にもそうなって欲しいと思うでしょう。

ティファニー・バルトーク監督

渋谷ホワイトシネクイントでは10月7日(金) 16:50の回上映後に、生前のケヴィンを知るRUMIKO(Amplitude クリエイティブディレクター / メイクアップアーティスト)と田辺ヒロシ(イラストレーター)、10月10日(月・祝)12:20の回上映前にゆうたろう(俳優/モデル)、アップリンク吉祥寺では10月15日(土)に鎌田由美子(資生堂シニアヘアメイクアップアーティスト)、10月19日(水)に渡辺三津子(ファッションジャーナリスト/元VOGUE JAPAN 編集長)のトークイベント付き上映も決定している。(詳細は公式SNS及び劇場HPにて発表。)

10月7日(金)より渋谷ホワイトシネクイント先行公開
10月14日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか順次公開

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作品紹介

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